暗転 (旧作)/石村
黒雲はすみやかにちぎれとぶし
さつきまではげしくしげくかはされてゐた
鮮明なエレキテル通信もやみ
すべてきらきらとみだれちる大気の狂詩曲(ラプソデイ)
ちいさな北の聖フランシスが蒼白の海を歩く夕まぐれ
ぴしぴしとかたい風をまいてその衣はふくらみ
なんともよい機嫌ですらすらあるいてゐらつしやる……
白陶の空まるみを帯びて晴れわたり
天末線にわだかまる
あのきちがひじみたスペクトルの交錯に
ただかなしみからのみものを云へば
それが余りにあともどりがきかないので
私は怖ぢ気乍らうたふばかりなのに
微かなはじまりを遐(とほ)く想へば(かぎりなくわづかなゆた
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