秋の道で/番田 
 
何も考えているわけでもないのだが、雨が降っている。バルコニーにつけたオーニングには雨が溜まっている。急に肌寒くなったものだった。一週間前は冷房をつけていた気がする。このような急激な気候の変化というのは明らかに人間のみならず動植物に悪影響をもたらしているような気が僕はする。例えば、秋や春に実をつける果物が、秋の中盤まで続く暑さによって実をつけなくなるというようなことが起きるかも知れない。そのようなことを考えていたのだ。時の流れを、ひどかった暑さがやわらぐと、早く感じる。そして、こんなふうに人は死んでいくのだろうと僕は思った。時間が止まった時の世界と言うのは、きっと、秋のような時間の流れの感覚があるの
[次のページ]
戻る   Point(2)