無題/由比良 倖
 
右に行けば心臓が
左には肺の痛みがある
今朝死損なった声帯の
(母子が)
妙に
かゆい

欠けた大空の脳漿が
明るく青く漏れて来て
折れた魚がとってもイギリス訛りで
紺碧の根を枯らすように自閉し

僕は放火する指先を切り落とした

      *
先生から逃げるには酸素が足りず
給食をアップル社製にしたのは誰ですか
箱詰めの夢にパウダーを付けて
乾いた野菜に苦い口づけをしましょう

金庫に閉じ込めて
箱男タクシー
楽屋に連れてって


五重の塔には
衛星が降るよ

傷だらけの天使を前線に立たせて
僕は青いお風呂に侵るよ

明るい影が攻め
[次のページ]
戻る   Point(1)