三つのプレリュウド (旧作)/石村
 

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うつろな瞳に透徹する秋気の約束。
驟雨を受ける唇の愁しみ――十月!
(鮮やかな血色(ブラッドレッド)は落ち……)
一滴照り映える秋蝶の微光(ひかり)、
ひそみまつはる薔薇色の交感(タッチ)。



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少女達の窓を訪ふ深夜の降雪。
しめやかに虚空に充ちて、無音の交響(シンフォニイ)は展(ひら)く。
結ぼれる透明な星の縮像(ミニアチュル)、
銀狐の夢が彫琢する細密な沈黙に
何時しか、星のやうに美しい少年の幻影は映る――
過ぎて行く冬。



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シトロンの森に陽射しはうらうらと焦立たしく
宝石を舐める鳩の羽を少年は残らずむしつた。
それから落ち着かない身振りでケエプを脱ぎ
川べりから狩の女神が水浴びを誘ひ
植物のやうに彼を抱いた。
水辺に揺れる夏の花――清潔な午後の転生!



(一九八九年十一月四日、同年十二月三日、一九九一年八月二十一日)



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