きたぐに (旧作)/石村
 


凍りついた曇りぞらと

あをぐろく執念(しうね)くうねる海の

きたぐに

確然としてくらいちからのくに

俺は心ひそかにきたぐにを愛し

乾燥した都市から遠く北方を眺めやる

鉄くづのやうにたれこめた空をふりすてて

いつさんにきたぐにへ疾るのだ

俺は氷点下の生を渇望し

いまにも都会の冬を叩き割りさうだ

暴君のちからのみなぎりは

ただきたぐにを願望す


      (一九九〇・一・二七)



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