がらんどうの部屋の抜殻/ホロウ・シカエルボク
 
感じる。先に感じた浮遊感とは少し違う。それは自分の人生の展開のようなものだ。先に行こうとする人間は、立ち止まる時に多くのものを得る。その、アップデートに蝕まれる肉体の蠢きを感じているのだ。窓の外が奇妙なくらい明るい。どうやら朝になってしまった。じっとしていた間の時間はどこに行ってしまったのだろう?盗まれてしまったかのような喪失感を感じる。それは振り幅の問題なのだ、大きく振れば両極へと行き来する。それは生半可な精神ではやり過ごせない。けれど自分自身の生を確かなものにするためには、その振り幅の中で生きなければ何を生み出すことも出来ないだろう。がらんどうの部屋の床を下からノックするものがあった。苦労して床板を剥いでみると、そこには誰よりも知っている人間の抜殻があった。がらんどうの部屋の抜殻。それはまるで風を待っているようだった。風を待って、それに乗って、居ないことになってしまいたがってるみたいだった。朝日は世界を焼き尽くそうとしていた。そして、床板を元通りにするのは剥がす時よりもずっと困難だった。窓を開けると風が吹き込んできた。なにもかものタイミングがずれているのだ。

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