必要のない階段 ー下り編ー/菊西 夕座
にはしない
ゆるく走らせる車にむかってまぶしく差し込む西日でさえも
じつは気の遠くなるほどの段階をわたって顔に降り注いでいる
わたしたちはいったいどれだけのことを間引いた眼差しで
惜しみなく与えられる瞬間を受け止めているのだろうか
すれちがう通行人の身振りにも「今」に連なるはるかな区割(コマ)がある
必要のない階段をつたってわたしは歴史という背骨にであう
時代を貫いて一切をつなぎとめている孤独な縫い痕に
詩をつたって天使を縫ってくれた言葉たちが天上にのぼっていく
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