必要のない階段 ー下り編ー/菊西 夕座
 
にはしない
      ゆるく走らせる車にむかってまぶしく差し込む西日でさえも
     じつは気の遠くなるほどの段階をわたって顔に降り注いでいる
    わたしたちはいったいどれだけのことを間引いた眼差しで
   惜しみなく与えられる瞬間を受け止めているのだろうか
  すれちがう通行人の身振りにも「今」に連なるはるかな区割(コマ)がある
 必要のない階段をつたってわたしは歴史という背骨にであう
時代を貫いて一切をつなぎとめている孤独な縫い痕に

詩をつたって天使を縫ってくれた言葉たちが天上にのぼっていく

戻る   Point(2)