必要のない階段 ー下り編ー/菊西 夕座
の償いをしてやろうと
三十段ある階段のてっぺんに花ひらくような女神を召還し
わたし自身が最下位から求婚する詩(うた)を作って公表し
必要のない階段に意味をもたせようと世に問うた過去がある
幾人かの心やさしい人たちがその詩に言葉を寄せてくれた
下手くそな芝居だがその階段には罪がないと言ってくれた
それなのにわたしは踏み段の隙間から指輪をおとしてしまい
それを合図に天使の頭上から女神という輪を去らせてしまった
階段はいまも段差の隙間にはびこる雑草に光を隠しうつむいている
そんな天使の痩せ我慢にせめてもの償いをしてやろうと
三十段あ
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