陽の埋葬/田中宏輔
のにおいとは違ったものであった。嗅覚者の鼻は、また死刑囚たちの身体にも、ふつうの死刑囚たちとは異なるにおいを感じとっていた。嗅覚者の鼻は、魂をにおいとして感じとることができるのであった。目の前に坐らされた死刑囚たちはみな暴力的な人間ではなかった。生まれつき粗暴な人間には、粗暴な人間特有の魂のにおいがあった。死刑囚たちは、おそらく思想犯だったのであろう。最近は、図書館の死者たちを解放するのだといって、破壊活動をする思想犯たちの数が急増しているらしい。国家反逆罪は、もっとも重い刑罰を科せられる。もちろん、死刑である。処刑される前に、眼球と内臓の一部が取り出され、再利用されるが、さいごに人柱として利用さ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)