寿限無/ただのみきや
て
音としてこぼれ落ち
騒がしい霊となれ
天は真っ黒な乳房をゆらし続け
地はオタマジャクシの大洪水だ
シュノーケルでの祈りを模索した
男の慣用句をウシガエル級のオタマジャクシが塞ぐ
句点にまかれ 継ぐことばもないまま
黄金を追って沈んでいった
あの拷問の向こうにある 澄んだ光
子どもは声もなく泣き
母親はわめき続ける
雷鳴は轟いて閃光を走らせ
雨になぶられオタマジャクシは歌う
おまえの口から死者が還るために
カラスと姦淫せよ
緋色の腐乱に思考を溶かし
奇跡を期待する過呼吸の少女のように
化石と姦通せよ
芽吹け芽吹けかぼそい彫刻よ
さわがしいまなざしの海原で経血を洗いながら
縫合されることのない
世界の裂け目
生と死が出入りする
名もなき生贄から擬音の皮を剥ぎ取って
一本の青いペンが走る
五感の先にあるシャッフルと陶酔の果て
ふれてはいけないなにかにふれて
すべて 無になるまで
(2023年9月24日)
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