月の村 (散文詩 8)/AB(なかほど)
すり抜けた
んじゃないか。
それでも、
スクは、陰暦の六月朔前後に浜に打ち寄せら
れる。まだ一度も藻を食んだことのない稚魚
でなければ、お腹の色が黒ずんでしまっては、
いいスクガラスができない。日頃公務員をし
ている男でさえも、何日も前から目の細かい
スク網作りをしながら、朔を待つ。銀色に輝
くスクが美しいのは、まだ一度も藻を食んだ
ことがないためだろうか、律儀にも月の朔に
打ち寄せられるからなのか、とにかく、光る
波打ち際で男達は嬉々とする。
あじずしが浜町出店に並ぶ頃、親っ様の漬け
た馴れずしがふるまわれ、キリコの灯が浜町
をねり歩く頃、虫送り
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