ひとりきりの王国/
由比良 倖
淡い青い気流の中、僕は、読書をしている
子供のように個人的に、このまま死ぬのかと思う
空気は甘く、僕はひとり、
針のように親しい、合板の本棚の前に、座っている
僕はひとりで、肌は薄く、また硬く、
心細いミルクのように
僕の過去はいつも秋だったみたいで、
ひとりであることをどうする気もなくて、
秋の中で死ねるのなら、それもいいのだと、
それから先は、何も、
分からないままでいるのです……
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