一昨日後ろの僕と/アラガイs
 
のではない。そう言い聞かされて来たので、僕は控えめで常に硬派だった。自分から誘うこともなかったので失礼なんてしたこともない。僕の最後の晩餐は、好きでもない年上の女の子との初体験だった。何回か会ううちにカクテルはますます薄くなる。昔買ったゲーテの詩集を少しだけ読んでみた。暇さえあれば鏡を眺め自惚れていた。

俺が俺という時期は短くて、あたまの中はバナナの皮だった。
たったの一週間で仕事を辞めて、それからは家にしばらく閉じこもっていた。僕は広島で(わし)らに負けたのだ。壱年半。今ではそれを引きこもりと言うそうで、明るくてモヤモヤした引きこもりが僕を俺にした。
姉が買って溜め込んでいた女性雑誌の
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