路/あらい
 
く、ひとっこひとりいない。表通りのくせに。
 どの道を亘り歩いても、炎熱の夏、空蝉が咽び啼くだけ。
 それでも閉塞感が幾分和らいだ気がして、ただ己が辛気臭いだけと自嘲する。ならば己の顔を思い浮かべて、便りも返事もないくせに 誰が何かを求めて、ただふらふらと生き急いでいたのかと名出しする。

 さすればほら、傍らに侍る。手探りの入口があるのだから這いつくばる出口もあるはずだと虫の知らせが、いったいどうやってここに迷い込んだのか、もうそれすら、
 「私とは、ここにいるのか、さだかではないのに。」
 うまれていくのか、しんでゆくのか、ただ、白鴉が一斉に視界を遮る。

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