飼い主のない猫 (散文詩 7)/AB(なかほど)
 
 三丁目の角を曲がったところで、ふと君の
匂いを感じたとき、なんてことないと思って
いたのに。


 電子レンジに卵を入れて、しばらく眺めて
から取り出し、破裂するかどうかを少しだけ
考える。あれと似ている。子供がもらってき
た風船は、気付かないうちにしぼんだ姿にな
っていくはず。それも似ている。なにげない
風に吹かれて、キジムナーに憑かれたら身震
いするんだよ。ってそれ武者ぶるいっても言
うんだけど。これも似ている。


 何気ない言葉で、それで傷付いたり笑って
しまったりできればいいのだけれど、何気な
く通り過ぎた言葉と、何気なく通り過ぎた風
がつついて、忘
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