齧りかけの林檎 (散文詩にしてみました 6)/AB(なかほど)
 
クロッキー

 齧りかけの林檎をはじめて描いたのは、13
歳のクロッキーで、もう、20年も前のこと。
その後、デッサン、水彩画、詩の入ったポス
ターカラー仕上げ、油絵、完成した絵は一枚
だけで、それも手元には残っていない。



なり損ねた夜

 夜11時過ぎ、久しぶりに漱石が読みたくな
って、まだ明るい古本屋へ。文豪名作全集は
ちょいと、◯?ジュニアもちょいと、文庫版
でいいんだけどさ、と、つらつらと目を流し
てると、林檎、林檎、それは、あの頃の君が
好きだった北の小説。林檎、林檎、林檎。

 あんなに齧りかけの林檎ばっかり描いてい
たのに、ただの林檎さえ
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