かんざし/本田憲嵩
深まるにつれて、
透きとおってゆく、
ちいさな、
白い水晶の房をつけた、
きみの髪にも飾りたい、
むすうに秋の野原をかざる、
あかるい大地の、
かんざし、
赤トンボたちが飛んでいる、
いくつもの季節を巡って、
きみの呼吸のように、
とうめいな風が無数のタクトを振っている、
あるいは、
とても穏やかな時間(とき)のながれのように、
ゆっくりと揺れかがやいている、
大地のメトロノーム、
あおぞらへとながれて、
もうきみの髪に飾ることができない、
さみしい秋の、
かんざし、
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