聲の形/板谷みきょう
 
ス展示や
ステージイベントを見て回り
彼女とも仲良く過ごしていた
これなら
上手く付き合えるんじゃないかと
有頂天になって模擬店で
両替えをお願いした

「千円札を細かくして下さい。」
『ん?何?』
「細かくして。」
『えっ!?千切って破る?』

全然、通じなかった

「千円を百円玉に交換して。」と
表現すべきだったと気付くのは
随分後のこと

帰りのバスで
二人で感想を話し合ってた時に
後ろで見知らぬ不良グループが
「おい。観てみろ。
つんぼが何か話してるぞ。」
ニヤニヤしながら
一人が話し
同調するように他数名が
ヘラヘラ笑った

一瞥したボクに
「あの人たち何を話してるの?」
彼女が尋ねてきたけど
なんとも言えない感情に
「別に大したことじゃないよ。」

本当のことも
自分の気持も伝えられず
ボクはバスに乗ってる間中
彼らのバカにし、ふざけた話を
聴こえないふりをしてやり過した

だから彼女とのデートは
それ一度きりとなってしまった

そのことを
聲の形は
思い出させてくれた
戻る   Point(3)