直接介助デビュー/板谷みきょう
った
万事上手く進んでいると
思っていたのに
洗浄用の生食を
スポイトに入れ渡した
「なんだ?生食ぬる過ぎだっ!」
そう医師が言うと
生理食塩水を容れている円形ステンレス容器の生食を
スポイトで吸ってから
術衣を着ているボクの胸元に
生食を吹き掛けた
「手を降ろせっ!交替しろっ!」
医師に怒鳴られ
望月さんに交替してから
隣接している滅菌消毒室に入り
ボクは泣いた
外回りの山崎さんが来て
「泣かないで。
早く、着替えてきなさい。
最初は、みんな同じなんだから。」
そう慰めてくれた
あんなに優しかった先輩の山崎さんは
それから
レントゲン技師と結婚したけど
結婚五年目を迎える前に自死した
原因も
理由も
ボクは知らない
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