誤記振りの根性/アラガイs
 

夏は獣臭い草叢を引きつれて僕の夜がはじまる。この湿気は妄想と戯れる暗闇の伴走者だ。チッまた羽虫が眼に飛び込んできた。
勢い急いで立ち止まれば大きな白い鼠が音を立てて、手前のブロックには壱メートルもあるトカゲが張り付いて動いていた。そして頸を動かした瞬間から目の前には小さな黒い虫が通り過ぎる。
なんてことはない。風の悪戯だった。ビニール袋が擦れセイタカアワダチソウが揺れる。点灯するヘッドライトの影が動いているだけなのだ。
べたつく汗を抱き自転車を止める。まだ薄暗い階段を登れば僕の一日も終わる。じきにお天道様も顔出し、また朝から照りつける猛暑のはじまりだ。  
上がる途中で鉢植えの植物が乾
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