陽の埋葬/田中宏輔
汚れた指で、
鳥を折って飛ばしていました。
虚ろな指輪を覗き込むと、
切り口は鮮やか、琺瑯質の真っ白な雲が
撓みたわみながら流れてゆきました。
飛ばした鳥を拾っては棄て、拾っては棄てた、
正午の日曜日、またきてしまった。
雨ざらしの陽の剥製。
屋根瓦、斑にこびりついた鳥糞。
襤褸を纏った襤褸が、箆棒の先で
鳥糞の塊を、刮ぎ落としていました。
あれは、むかし、家に火をつけ、
首をくくって死んだ、わたくしの父ではなかったろうか……。
手の中の小さな骨、
不思議な形をしている。
羽ばたく鳥が陽に擬態する。
わたしは何も喪失しなかった。
一
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