雲の披露宴?/菊西 夕座
 
とおしい花嫁

繭のなかにはたくさんの電気が糸状菌のようにこまかく蠢き

つぎからつぎに生まれてはわたしの花嫁を新しくしならせる

はじき合うむすばれを拒絶しながら独楽はまわり続けている

地上からみれば小さな欠片のチカチカする煌めきでしかない

花嫁の消えたぬけがらの白い衣装がいつのまにかふえていく

壮大きわまる引き出物のように白いドレスがむやみに連なる

巨大な白いとり皿がひきのばされては千切れくばられていく

やわらかなその皿に曙光の送り火としてキャンドルがともる

家路にかえる鳩の群れからよこぎりざまに弔電をうけとると

空をおおう棺から青くかがやく透明な水が静かにぬけていき

風にまかせて泳ぐ繭からいっせいに距離が羽ばたき縮まって

あの独楽が別れの穴をふさぐ栓として胸の星になるのだった

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