白んだ月/ホロウ・シカエルボク
 
烙印が穿たれたあとの血肉は消炭のように砕けた
枯れた谷底の川底を舐めながら、ひととき
黄色く発光する月を見上げて
撃ち落としたいと望んだ
薄い靴底は尖った岩を踏む度にそのかたちを伝え
いちいち小さな悲鳴を上げさせた
まだ秋とも呼べぬような秋の始め
どこかに潜んでいる筈の生きものたちは
声どころか気配すら感じさせはしなかった
ここは、もしかしたら
輪廻から外れた地なのかもしれない
いつから食ってないのか思い出せなかった
死にそうなほど飢えていることに
気付きもしないままで居た
ジリ貧
獣でも現れればいいが
手持ちの武器は疲れ果てた身体だけだった
あの日聞こえた泣声は
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