むすびめほとけて/武下愛
 
ガラスを溶かし流し込んだら色付けして。散りばめられた色を際立たせるように空に返した。空が呼吸するたびにきらめくのは、夜明かりだからかもしれない。太陽と呼ばれる、一閃はまだまだ訪れない。際立たせる鏡であるのはいつも月なのかもしれない。流し込まれたガラスはいつの間にかそうぞうのままに形を成していく。ありのまま。いつかはイルカだったし、何時かはスズランだったし、何時かはもみの木だった。今ではなすべきことの意味を、問わずにいる。何に見えるのか問うてくるように。ガラスが変幻していく。ガラスと言っているだけでなんなのかは、はっきりとわかっていない。言葉として扱う上でガラスという言葉が絶妙な区別を付けたのであっ
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