車窓に雨 (散文詩にしてみました 2)/AB(なかほど)
新しい病院へ向かう車の後部座席で寝転がっ
て、窓の向こうを見ていた。お泊りはもうい
やなんだけど、もう、指を銜えるほどちっち
ゃい子供でもない。やがてドアが開き、傘を
さしながら「ゴメン」と言った父の気持ちが、
今でも判らない。
同じ雨が降るわけじゃない。同じ雨が降るわ
けもない。ワイパーの向こうに、もうすぐ、
古くなってしまった県立病院が見えてくる。
聞けば父は答えてくれるだろうか。覚えてい
るわけもないのに。
同じ雨が降るわけじゃない。父にも、同じ雨
が降るわけもない。静かに停まった駐車場で、
どこからともなく「ゴメン」と聞こえたのだ
が、それは父の声ではなく、僕の声なのか。
同じ雨が降るわけもないのに。
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