割り込む女[まち角25]/リリー
 
 
 一度だけ首を後方へ回し
 こちらを向いた女は無表情で、厚化粧だ
 顎のエラがはっている

 京阪の改札口から出て来た彼女は
 並び建つJRの駅、上りエスカレーターで
 僕に体を寄せて割り込んだ

 そして駅構内のセブンイレブンでも
 レジ待ちの列ですかさず
 僕の前へ並び
 さらにはJR自動改札口を通る時にも
 横入りをしたのだ

 その背中を 苛立ち見つめる僕に 
 気付いてなんかいないのだろう

 ゆったりとしたシルエットのワイドパンツが似合い
 厚底のサンダルをさばく彼女の脚 
 まるで星の降る南の島のたくましい女の様
 血汐の流れは赤くて激しいのか

 彼女に割りこまれた僕は
 清い空気の日本という緑の国
 なよやかな風に 髪をなびかせる男
 という事にでもしておこう
 
戻る   Point(1)