音色/久遠恭子
 
草むらで月鈴子がリリリンと鳴くから
季節が移り変わっていくのを感じる
風鈴の音色とも少し似てしまうから
間違わないように風鈴は小箱に仕舞おう

静まり返った夜の向こうで
あなたは何を思うのかしら
その羽音を聞いて
窓を開けてみるのかしら

リリリン
透き通るように遠くで
リリリン
耳を澄まして

ふと思い立ってドアを開けて
暗闇を手探りで歩いた
全ての形が何かを暗示していて
世界は万華鏡みたいだった

降り注ぐ空気が
少し冷たくなって
鋭敏な感覚が
少しずつ戻って

リリリン
月鈴子の羽音が
リリリン
涼風を運んでくれたのか

瞬きをする気持ち良さとか
誰かと話すのが楽しかったこととか

思い出してクスッと笑った

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