回帰線/soft_machine
ちいさくて固い 心臓が
そっと弛まるように
白い雲は
もう 空の高さを競わなくなった
風が足跡をうずめるように
虫達も その聲を次第に顰ませて
次つぎと落ちて プリズムの
ひと粒まるい雫になった
そこに 一枚の楽譜があって
いつまでも連なる
ひくい雨 ひらかれた窓には
細くて ひき伸ばされた
膜 純水 木もれ
(漸くなら 綺麗だとおもう)
瞳に結ぼれたほそい錘は
揺れながらある図を描く
波の重なりには決して届こうとしない
どれだけ張りつめようと
それはいつまでも鰓を持たない
皮膚の息のし難さを
(このふところまで来る波が)
別離し 潤す
眺められたのは
ただひとつ確かに あの雲
今とも違うま新しい水を求めて
また降らせる
他に交わるもののない祈り
そして乾いたあの夏
回帰する線は
ひかる道しるべ
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