この夢のどこかに/ホロウ・シカエルボク
 

蝋細工の、人間の形をした名前の無い紛い物が、夏の温度によって次第に溶け?せ衰えていくさまを記録した短いムービーが、失われたシアターでリフレインされていた、それにはBGMどころか音そのものすら記録されてはいなかった、サイレント・ムービーというやつだ、いつ頃作られたものなのか、誰が作ったものなのか、情報としてなにひとつわかるものはなかった、そしてなぜ、この映画館でなければならなかったのか―劇場としての価値はとうに失われていたはずだった、客席の椅子はすべて取り払われ、タイルが割れて下地が剥き出しになったでこぼこの床があるだけだった、スクリーンはかろうじて残ってはいたが、映像を映し出すのに最適な状態と
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