陽の埋葬/田中宏輔
 
に住んでいることが知られて恥ずかしいという思いが、彼に、また会ってくれるか、と言うことをためらわせた。本来は女が好きで、月に一度くらい男とやりたくなるという彼の言葉もまた、ぼくの気持ちをためらわせた。なにしろ、月に一度だけなのだ。
人間は自分のことを知ってもらいたい生き物なのだと思った。初対面の相手に、自分が中国人で、自分が小学生のときに家族といっしょに日本に来て、兄弟姉妹が六人もいて、自分は長男で、中学校を出たら働かなくてはいけなくて、それで、学歴がなくても働ける水商売の道に入って、いまは風俗店の店長をしているということや、自分は女が好きで、いっしょに暮している女がいても、ほかにも女をつくって
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