夜の独り言/
久遠恭子
夜は電気を消しているから
スマホの明かりだけが頼り
指先の動きだけが
生きていることを知らせてくれる
こんなに小さい機械の中だけが
わたしの世界で
波間に漂うクラゲみたいに
ふよふよと浮かんでいる
浮かんで
沈んで
透明な遺伝子を撒き散らす
ふふふと笑って
ため息をひとつ
浮かんで
沈んで
クラゲは夜の海を漂う
たぶんそのうち
溶けてなくなる
そんな生き物
ちっぽけな
透明のいれもの
ふよふよ
漂って
ただ流れていくだけ
気付かれもせず
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