Uruu/竜門勇気
もう少しで凍りつきそうに冷えていたけど
私以外は日差しを見るだけで、今日はとても暑い日だと決めつけていたから
何も言えなくて、かいてもいない汗を時々拭うふりをしていた
誰のものともわからない筆跡で
誰に宛てたかもわからない祝辞が書かれた汚れた風船を無数に縛って
紫色のバンはピカピカに磨かれたまま湿った空気の中を滑るようにトンネルに入っていった
水銀灯の不自然に暖かなオレンジ色の光を瞬くように反射しながら
ライトも付けずに走っていく悪魔を想像したけどうまくいかなかった
ここにあるのがそれそのものだと確信していてもうまくいかなかった
恐怖は何かを縛るのに十分に長く強靭で実際そうしてい
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