空白/由比良 倖
 
画集の、印刷の匂い、
――――――――――
私はもはや空っぽで、
何も求めてはいない。

何もかもとお別れして、
真っ白な風の中を消えていくのも、
そう遠くはないだろう。

画集の印刷の匂いに
鼻を近付けて嗅いでいれば、

私は十四歳のまま
あの頃の空っぽのまま.

……
いつか溶け残った空に私を感じたら
あなたの心の空白の頁を
少しだけ感じてあげて

私の分も……
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