秋の道/リリー
 
 林檎を むきながら想う
 貴方の目
 どうしても思い切れない
 あなたの声

 リトルシガーの煙
 うすく立ちのぼる果は
 頼りない指の先
 もはや 希望の色はなく

 何か ぼやけているのだ
 そっくり同じ私が機械的な手つきで
 林檎をむきながら
 すすり泣いている様であったが

 仕方がないじゃありませんか!
 前を向くのも
 空を ふり仰ぐのも悲しいと言ったって

 後ろ向きに歩むわけにもいかない

 そこに 細くのびる道
 少し鋭い秋の陽に
 恋が流れて
 石畳に反響する



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