ああ、次の波がもしも爪先にやって来たら/ホロウ・シカエルボク
海の彼方で揺らめいていた狐火がいつの間にか消えていたので、千枚通しで手のひらの真ん中を思い切り貫いた、その刹那、激しい火柱が世界を二つに分け、それからそれまでと同じ暗闇と静寂が訪れた、そう、狐火は消えてしまったのだ、ずっと眺めていたのにいつの間に消えたのかまったく分からなかった、だって星のない夜、月は黒雲に隠されている、大型で強い台風がゆっくりと移動している、この季節になるとお決まりのように天気予報が繰り返すニュース、もしかしたら誰も歳など取ってはおらず、同じ季節を繰り返してるだけなのかもしれないなんて、そんなまやかしを信じてみたくなったりもするさ、けれど、人生の中で何人かは居なくなったし、や
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