陽の埋葬/田中宏輔
 


インインと頻(しき)り啼く蝉の声、
夏の樹が蝉の声を啼かせている。

頁の端から覗く一枚の古い写真、
少年の頬笑みに指が触れる。

本は閉じられたまま読まれていった……


?

日向道、帰り道、
水門のかたほとり、睇(めかりう)つ水光(みずびかり)。

すこし道をはずれて、
少年たちは歩いて行った。

だれも来ない楡の木の下蔭、
そこはふたりの秘密の場所だった。

あわてものの象戲(チエス)のように
鞄を抛り投げて坐った。

「きょう、学校でさ、
 脈のとり方を習ったよね。」

何気ないふりをして腕に触れる。
[次のページ]
戻る   Point(16)