陽の埋葬/田中宏輔
I
インインと頻(しき)り啼く蝉の声、
夏の樹が蝉の声を啼かせている。
頁の端から覗く一枚の古い写真、
少年の頬笑みに指が触れる。
本は閉じられたまま読まれていった……
?
日向道、帰り道、
水門のかたほとり、睇(めかりう)つ水光(みずびかり)。
すこし道をはずれて、
少年たちは歩いて行った。
だれも来ない楡の木の下蔭、
そこはふたりの秘密の場所だった。
あわてものの象戲(チエス)のように
鞄を抛り投げて坐った。
「きょう、学校でさ、
脈のとり方を習ったよね。」
何気ないふりをして腕に触れる。
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