ダンサーの夜/朧月夜
ての世界。
わたしは甘えている?
そうかもしれない。
糊口をしのぐ。それだけの手段。
でも、普段には地味な格好をしている。
誰も、わたしが風俗業の世界の人間だと、
容易には悟られない。
だが、いつかそれを見破られ、
そこから恋が始まり、
ポールダンスを止めることも考えている。
いや、それはわたしの妄想だ。
いつかは、場末の温泉旅館などで、
老いた肢体を晒すのだろう。
幸福はどこへ行った?
たぶん、捨ててしまったのだろう。
プライドなど、とうに捨ててしまった。
わたしを最後に抱き留めるのは、
臨終に際して体を抱えた女将(おかみ)、
「あんたはなんで若くして亡くなったの?」
わたしはしがない場末のポールダンサー。
いつでも輝いている。いつまで輝いている。
そうでなくちゃ……わたしはわたしじゃない。
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