失う夏のソネット/
佐々宝砂
日差しの刃に斬られ
だらしなく溶けてゆくかき氷の
まだ冷たいスプーンをなめながら
またひとつ星がおちたのに気づく
小豆とぎと河童と
座敷わらしとあと誰だっけ
訃報を連絡するために
黴の臭いの住所録をひっくり返す
身に沁む季節がくる前に
わたしたちは失い
喪失の季節を味わう前に
わたしたちは忘れ
大切なことはなにもないか
すべてが大切なことなのか
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