夏/あらい
ないひとすじの、線上に擱いて、征くこと
呼吸
小走りな靴跡と泥を跳ね
飛び石を堅く叩く
落ちかかる日に足を取られ
惹き吊るようにもありました
この雨は
わたしを覆い隠してくれる
やさしいだけの我儘の
楔のような、あとでした。
かつかつとうろつきまわる
そのうちに
地を這うように脈々となり
ひたひたとしみゆくときに
忙しないだけの 醜いものは、
それでいて
梟の様におおらかで、
得体のしれない声を上げ
疲れ切ったひとびとの
合間を縫っても 誰一人
ぬばつむだけのサナトリウム、
浅瀬を波打つものでした
物音ひとつないくせに
かげのごとく偲ばせる
吸いつくだけで
くぐもるばかりの
雀の涙かもわからない
おぼれているのは群衆の
沈んだままの淡いで削げた
からころとさる鳥たちと
夕餉をくぐらす団欒と
伽藍洞にも寄せ返す
代わり映えない光景の
子猫のような黒い影、
急かして廻るまなざしの
ただまばゆくさき夏のひぐらし
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