銃弾はひとつだけでいい/ホロウ・シカエルボク
 

白蝋病の脳下垂体が午睡の最中に揺蕩う夢は、可視光線の乱舞の中の血の華、難消化性デキストリンが渇いた腸を掻き回す、グリアジンの気紛れな呪詛、五臓六腑で踊り出す、偽造通貨が廃棄物処理場で網膜に焼き付ける断末魔は、電化機器の白濁から滲む蜂蜜色の油みたいで―ベズレーに残された御伽噺のような空、コルトレーンの戦慄の中で膿む、客車の制限された長距離列車の中で結合双生児は互いの望み通りに、そうさ、ドレスデンベッドにはまだ空きが無かった、看護師達はステンレスの洗面器を手に乱闘を始める、リノリウムの廊下はまるで人体の見本市だ、甲虫の群れは曲り角で休息を決め込んで青銅色の煙草を吹かしている、金属音めいた発声で喋る
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