惚けの呪法/ただのみきや
 
まなざし

鉄鋼団地公園の横
線路に突き当たる一本路で車を止めた
遠く路幅いっぱいに電車が駆け抜ける
一枚の幕 昔の映画のフィルムみたいに

時間について考えた
わたしは今という電車に乗って未来へ向かっているが
ある地点でそこから落っこちて
今が遠くへ行けば行くほど憶えている者はいなくなるだろう

だがここにひとつのまなざしが残る
時の流れに垂直に対峙するひとつのまなざしが
ひとつの詩を書き残すということはそういうことだと思う
そう 行為としては
幽霊義眼の試着愛好家など
たとえひとりも訪れなかったとしても




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