降る雨の/リリー
降る雨の音の彼方
何か物憂いささやきがある
降る雨の
或る古い影が
街頭へ彷徨い出て
騒音の中で狂い始めた
一心に 鎮めようと
声をかけたが
空を跳ね 地をうがち
私の声など一にぎりにつぶしてしまった
辺りの闇が急速にまわり始める
何故だか
私はかすかにほほえんでいた
(これが 分身なのか?)
瞳をとじてみると
美しかったのだった
瞳をとじてみれば
心底優しい気持ちになって誰かに
抱いてもらいたかった
一人の時は こんなに素直なのに
降る雨の音の彼方
閉じし心の虚しき重さか
戻る 編 削 Point(2)