美の真髄は置き去りのガードレール/菊西 夕座
 
ずむ雨の垢
舗装のわだち、這い回る蟻、ひしゃげたトタン
ふすまとガラスで区切られた音のない縁側
そこに挟まって立つ地味な服の病弱な女

見向きもされないってことのほうが支配的
工事人夫がヘルメットからたらす汗でさえ
見逃されているってことのほうが多すぎる
世のくさぐさはこんなにも置き去りに道ている

だからこそ世界はうつくしい

防護柵に話しかけるほうが絶望的かと思う
そうして突き放されるぶんだけシャドーが増す
影深い車道にこそ美の真髄はレールを延ばす
空き家の庭のまんなかで黄色い百合が背を伸ばす

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