美の真髄は置き去りのガードレール/菊西 夕座
 
夏まっしぐらの緑したたる峠にあって
世のくさぐさは置き去りにみちている
だれがいったい気にかけてくれるだろうか?
路傍の瀬戸際でひんまがったガードレールを

曲がりなりにも身を呈して明け暮れる棒立ち
へこんだ支柱、はがれた塗料、くすんだ白さ
跳ね上がった泥水と擦過傷でくたびれた肌
ボルトの銀ボタンをだれがいったい気にかける?

通りすがりに子どもが棒でたたけば望外か?
足元の草ぼうぼうが話し相手になるのやら
律儀に道に沿って延びるだけいっそう平板で
際に立つからといって際立つこともないライン

それでも生きているからこそうつくしい

斜面の草、廃屋の窓、壁に黒ずむ
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