夏を捨てたら/暗合
 
、郷愁だけが夏だった。もう二度とあなたを忘れないなんて、別れるまでは思わなかった。
 夏は暑くて、ジメジメしていて、冷房を効かせすぎてかならず風邪をひいてしまうし、ひとり、部屋の中で震えているだけで過ぎていく夏休みも、あるいはあの人が知らないやつと遊びに行った話を笑顔で聞いた絶望も、ろくに生きてはいない人生、命が無闇に燃えていくなかでキャンプファイヤーをして、泣いていた、その涙が乾いて幽霊が、慰めてくれた温もりを捨てたまま、また別の無関係な一日を過ごす。また夏が来る。また僕が捨てる夏だ。
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