ただの呼吸/asagohan
速度0から
バスがゆっくりと動き出す。
時間は命だ。
そんなのは嘘だ。
ただ、私は時給0円で待っている。
家につくのを。
景色が展開する
街が離れる。
ごちゃついたものが
夜の深みに消えていく。
通り過ぎる
灯のない家々の中にも
微かな息づかいがあるらしいが。
窓は氷嚢のように
頭を冷やして
もう眠れと訴える。
時間は命だ。
そんなのは嫌だ。
扉から初夏の風が吹き込む。
今度は
あめ玉のような
赤いテールランプが夜に舐められ
消えていく
そして、バス停には
ひっそりと私一人分の呼吸が残される。
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