陽の埋葬/田中宏輔
 
際。

どこかに耳のない天使がいないか、
わたしはさがし歩いた。


  *


──どこからきたの?

海。

──海から?

海から。

──じゃあ、これを返してあげるね。

すると、天使は微笑みを残し、


   *


月の渚、
翼をたたんだ天使が、波の声に、耳を傾けていた。

月の渚、
失くした耳を傾けて、天使は、波の声を聴いていた。

月の渚、
波の声は、耳の行方を、耳のない天使に囁いていた。

月の渚、
もう耳はいらない、と、天使が無言で呟いていた。

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