夜想67/ひだかたけし
すっかり夜だ
カーテン開ければ
満月輝く 白く白く生照らし
円かな輪郭保ち柔らかな光にて
どろんと赤々地平に昇るその巨大忘却させ
(それは死そのもの だった)
死は生に付き纏い
生は死を絶えず含む
思考直観を掴めない限り
人は像に防御され目覚めて
意志は眠り感情は夢見て覚醒し作用し
私達は像のなかにひたすら生き続ける
(鏡に映るあらゆる像、
それは宇宙という実体の仮像)
*
すっかり夜だった
さっきまで明るみに浸され
太陽の燃える光に輝いていたのに
光から闇へ
私は未だ知らない
この変容の営み本質を
時間は肉体の滅び示唆し
残余のこの己の生の糸 手繰る
私は、
執拗に 裂開する瞬間に賭けて
執拗に 日々の営み反復維持し
満月 円かな輪郭保ち柔らかな光放ち
輝き 覚醒した意識にその深海示唆し
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