小旅行にて/短角牛
 
誰にも故郷があって

それが心の拠り所と呼べるものでなくても

またその地を踏んでみれば 何か思うものがあって


私はなぜだか 駅に降りたら涙が込み上げてきた

帰ってこれたことが なんとなく嬉しくなった

親しい友はここにいないけれど それでも

道が 店が 街路樹が 一歩だけ親しかった


孤独だったかもしれないけど 思い出も蘇った

なんてことはない コンビニで甘いパンを買ったこととか そんなものだ

でも それは私を支えていた 大事な時間だった


近頃は 思い出と呼ぶべきものを捨てる作業ばかりだったから

捨てなくて良い思い出 漂う記憶
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