【短歌祭参加作品】家族譚/紫野
 


東京より来たる夫のたこ焼きを返す手つきもあざやかになり


年少の子の足下に犬伏せる晩飯時の特等席なり


形だけの詫びにと届くふた箱のいちごが黒くなってく野菜庫


さっきから言いたいことが言えなくてプッチンプリンをかきまぜている昼


早春のバスに揺られて少女来るうぐいす色の餅菓子もちて


筍をゆがくお鍋のくつくつと静かに君の帰り待つ夕


西側の窓開けはなち出来上がる揚げ茄子の熱 夏のむらさき


ナタデココいっぱいの海で泳ぎたい貴方はいやがるだろうけど


箸置きはあんまり使わないけれどウミウシ型のがあれば是非ぜひ


レイトショウお米と傘を忘れずにぼくらはそっとうしろで観ようね




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